大久保さんの人となり


ダブルワークの「非正規ワーカー」
知事選に挑む!

県知事選挙への立候補を決意した「非正規ワーカー」大久保雅子さん。人となりを紹介します。

芸術家の道を夢見て

保育園の頃の雅子さん
保育園の頃の雅子さん

 雅子さんは、1964年7月、阿知須町(現山口市)生まれ。コメや野菜作りを営む父・大空旭男さん、母・富子さんの一人娘として、大切に育てられました。子どもの頃、家で飼っていた農耕牛に餌をやるのが楽しみの一つでした。

 地元の小中学校を経て、県立山口中央高校に入学。幼い頃から絵を描くことが好きで、得意でもあった雅子さんは、高校に通うかたわら、山口市内の画塾に通い、デッサンや油絵を学び、都会の芸術大学への進学を夢見ました。しかし、経済的な事情もあり、近くの山口芸術短期大学(現山口芸術大学)の造形コースに進みました。同大学で学ぶ中で、萩焼に惹かれ陶芸部に入り、部員で窯焼きにも取り組みました。

画塾で制作中の雅子さん
画塾で制作中の雅子さん

仕事の傍らで将来を模索

 卒業後、就職したのは防府市に本店を置く「エムラ」。婦人服から紳士服、宝石類なども扱う総合ファッション会社です。受付からスタートしましたが、その後、紳士服売り場を担当し、顧客からの評判が良いことで会社から表彰されたこともありました。しかし、美術家への夢は、あきらめることができず、9年で退社、新しい道を模索しました。

 自分の夢を実現するためにも、手に職をつけようと考えた雅子さんは、職業訓練が受けられるポリテクセンター(山口市矢原)に入学し、コンピュータを使って設計や製図を行うシステム(CAD)を学び、宇部市の建築設計事務所に就職。阪神大震災の発生(1995年1月)を機に需要が高まった耐震診断の仕事にも携わり、2級建築士の資格も取得しました。

結婚、シネクラブ代表へ

 この頃、知り合いだった美術家のアトリエで働いていた大久保努さんと出会い、結婚。設計事務所を退職し、専業主婦に。以前から入会していた話題のミニシアター系映画を山口市で自主上映する「西京シネクラブ」が事務員を募集していたので応募。1999年には事務局を引き継ぎ、2016年から同クラブの代表に就任しました。

 往時、600人いた会員は、娯楽の多様化もあって、大きく減少し、運営には苦労が絶えませんが、「映画を通して、平和や自由の尊さを感じてほしい」と存続に力を尽くしています。

海外、県美展でも評価

台湾に展示された雅子さんの作品(中央は、努さん)
台湾に展示された雅子さんの作品(中央は、努さん)

 美術家への夢も追い続けました。

 現代アートが盛んな台湾の文化財団が募集したコンペで、プレゼンテーションした作品が採用されたこともあります。作品制作のため、防府市内に倉庫を借り、2年に渡って壁画づくりに没頭し、船便で台湾に送り、完成させました。「制作費は日本円で1000万円位ありましたが、アトリエとして借りた倉庫の借り賃や材料代、渡航費などでほとんど残りませんでした。しかし、「自分の作品が評価されたことが嬉しかった」と振り返ります。

 その後、山口県美術展覧会にも出展し、佳作、入賞などを経験しました。

映画を通して政治の歪みが

 「この頃まで、社会のウラ側には目が向いていなかった」と言う雅子さんが変わるきっかけになったのは、「映画」でした。

 『六ヶ所村ラプソディー』(2006年公開)で、鎌中ひとみ監督に来山してもらい上映とトークの会を行いました。その縁で、鎌中監督から『ミツバチの羽音と地球の回転』の公開前の全国初上映会の打診を受けました。

祝島から見る上関原発予定地の風景
祝島から見る上関原発予定地の風景

 中国電力による原発建設計画で分断される上関町祝島の人々の姿を描いたドキュメンタリーで、上映会では鎌中ひとみ監督の舞台あいさつも行われました。

 雅子さんは「この映画を通じて、原発の恐怖と国・大企業の横暴、日本では民主主義が機能していない現実に気づかされました。その直後に起こったのが東日本大震災と福島原発事故。おかしいことには声を上げなければいけない、と心に刻みました」と振り返ります。

 その後、「標的の村」などの上映を通じて、三上智恵監督とも交流を深め、沖縄はもとより、県内でも加速する大軍拡には怒りを隠せません。

市民運動の延長線として

 40代後半には家計のために西京シネクラブ運営と同時に、近所のセブンイレブンで働き始めました。そして、映画の宣伝で文化団体や民主団体を訪問していたことがきっかけで、山口大学教職員組合の書記にも採用されました。

 こうした体験を経て、雅子さんは、県内の様々な市民運動に積極的に関わり、欠かせない存在として、多くの人に頼られる存在になりました。

 今年8月中旬、県知事選への挑戦を懇願されました。「躊躇もありましたが、知事選への挑戦は、今まで私がやってきたことの延長線上にあるもの。チャンスととらえ力を尽くしたい」と雅子さん。

 「非正規ワーカー」大久保雅子さんの挑戦は始まったばかりです。

(協力:山口民報)

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